2004年02月26日

エッセイ  西園寺 歌名

最近、阿川佐和子さんのエッセイ本を拝読した。

わけあって1か月前から新幹線通勤をしているのだが、
そろそろ眠って過ごすのにも飽きたある朝、通勤時間に
読む本はないかと、ふと思ったのだ。
しかし、私は既にホームに立っていた。ここから近くの
本屋まで行こうとしたら、確実に乗り遅れる。
次の新幹線は30分後だ。
田舎の、しかも新幹線のためだけの駅なので、駅ビルなど
というものはない。

万事休す。
また眠るしかないのか・・・。いやいや。何か読みたいのよぉ。
いったんそう思ってしまうと止まらない。

「久しぶりに赤川次郎でも買うか?」と、KIOSKをのぞく。
グルグルまわる小さな書棚(?)に80冊程度の単行本が
並んでいる。
自己啓発系、推理小説系、マンガ。。。
その中の、厚さといい装丁の色合い(イラスト)といい、
控えめだけどちょっと気になる1冊が、かの阿川佐和子さんの
『いつもひとりで』だった。

「ちょっと痛いかなー」と、読後に落ち込む自分を想像して
迷ったが、そこへタイミングよく、「列車がホームに入ります」
とのアナウンス。自虐的な気持ちになりながらお金を払い、
すぐさま自由席待ちの列に並んだ。

32歳を過ぎても結婚もせず、予定もない。もう縁がないのも
厄年のせいにはできない自分の胸に、さぞやグサグサと
刺さるお言葉が並んでいるのだろうと覚悟してページを
繰ったのだが、品川駅に降り立ったときには、なんだか
すっきりしていた。

結婚願望が強く、いつかは自分にも相手が現れて結婚する
のだから、なんだかんだ言って仕事はそれまでのもの、と
考えておられたという。
ところが、いつまで経っても、その相手は現れない。割と
お若いころからお見合いもなさったらしい。
でも、現れない。何年も。

「いまでもひとり」ということを随所に書かれているのだが、
その状況をカラカラと笑い飛ばしておられるのが気持ちいい。
そこには自嘲の色は微塵もないのだ。
今も結婚を諦めるなんていうことはなく、でも、おひとりの
生活を満喫していらっしゃる感じがする。

ああ、そうなんだ。
肩の力を抜いて、周りの状況に焦らされることなく、自分と
相談しながら生きていればいいんだ。
もしかしたら、結婚しないかもしれない。でも、恋愛は出来る
かもしれない。いい仕事にめぐり合えるかもしれない。ひとりの
楽しさを、縛られることのない生活の豊かさを実感することが
出来るかもしれない。

「他の人と比べない」とはいっても、あんまり目標をひとつに
決めすぎて前だけを向いていても、失敗したときが怖いことは
私も就職活動で知った。数年引きずったもの。
だから、「絶対に結婚しなくちゃ」とか「ううん。(こうなったら)
私は仕事に生きる!」なんて決めなくてもいいんだ。

でも、「いつの間にか時間が過ぎて、おばさんになっちゃった」
というのだけは避けたい。
何か、「あのときはこれに夢中だった」「あれを学んだ」と、
小さなことでもいいから言えるような時間の過ごし方をしたい。

今の私はきっと、具体的な目標(目的)を持ってガチガチに
計画遂行に向かっていくときではないのだろう。
阿川さんは、そんなメッセージを伝えようとなさっていたのでは
ないかもしれないが、私の目を少し大きく開かせ、また勇気
付けてくれたことは間違いない。

しかし、KIOSK。あなどれぬ。
きっとあの場所でなければめぐり合えなかったろう。
あまりにもたくさんの本が並びすぎると、途中で目移りしすぎて
かえっていい本への道のりが遠くなってしまうものかもしれない。
(了)

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いつもひとりで 単行本


cover

いつもひとりで 文春文庫

投稿者 西園寺 歌名 : 2004年02月26日 23:12 | トラックバック
コメント

そうなのだ。「他人と比べる」というのは、もしかして日本文化の根底にあるのかな。こんな歳になって、みんなが経験してることを、私はしてない。結婚も、子育ても。そして、女性失格、人間失格、私は変?ブスだからしょうがないなどのレッテルを自分で自分に一生懸命剥がれないようにアロンアルファで貼り付けてがんじがらめにしている。そんなことをしている間に、貴重な時間と機会は流れ、もしかして、すごくいい出会いや感動を逃しているのかもしれない。「もったいない」もう、そんなに時間はないのだから「もったいない」私は、この頃、この「もったいない」を繰り返している。聖路加病院の日野原先生が書いておられた。「人は、不幸には敏感だが、幸せには鈍感である。ちょっとした傷でも、ものすごく敏感に反応する。しかし、ちょっとした
幸福は感じ取れず、見逃してしまいがちである」こうやって、なんとか自分を持ち上げようとしているのも事実だが、阿川さんの本、読んでみよう。

Posted by: korierauem : 2004年07月31日 10:46
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